[アップデート] Amazon VPC IP Address Managerに無料利用枠が導入されました
しばたです。
本日よりAmazon VPC IP Address Manage (IPAM)の料金体系が変わり、単一アカウント向け基本機能を提供する無料の「IPAM Free Tier」と詳細機能を提供する有償の「IPAM Advanced Tier」に別れる形になりました。
AWSからのアナウンスはこちらになります。
機能差について
料金ページに各Tierで使用できる機能が記載されているので転記します。
- Amazon VPC pricing
- 現時点では英語版ページのみ記載
機能 | IPAM Free Tier | IPAM Advanced Tier |
---|---|---|
Bring Your Own IP Address (BYOIP) | OK : 利用可能 | OK : 利用可能 |
Amazon provided contiguous IPv6 blocks | OK : 利用可能 | OK : 利用可能 |
Public IP Insights | OK : 利用可能 | OK : 利用可能 |
Bring Your Own ASN | OK : 利用可能 | OK : 利用可能 |
Private IPv4 management | NG : 利用不可 | OK : 利用可能 |
Share IPAM pools with AWS accounts | NG : 利用不可 | OK : 利用可能 |
Audit IP history | NG : 利用不可 | OK : 利用可能 |
その他上記以外の機能 | NG : 利用不可 | OK : 利用可能 |
(2023年11月19日時点)
一番大きなポイントはPrivate IP管理の可否かと思います。
大抵の組織において管理したいのはPrivate IPでしょうし、これが一番のメイン機能とも言えます。
このため多くの場合においてAdvanced Tierを選ぶ必要がありFree Tierのメリットを享受できることは少ないと思われます。
Free Tierを選ぶユースケースとしては
- BYOIPのIPを管理したい
- IPv6のIPだけ管理したい
- Public IP Insightsを使いたい
となり、BYOIPは多用するものでは無いので現状「Public IP Insightsを使いたい」というケースが一番になるでしょう。
加えて将来的にIPv6の利用が増えてくればさらにFree Tierのメリットを享受できる様になると思います。
料金について
Advanced Tierの料金は従来通りIPAMで管理されるアクティブなIPアドレスごとの時間課金となり、その単価も変わらない様です。
本日(2023年11月19日)時点の東京リージョンでは
- 0.00027 USD/IPアドレス-時間
となっています。
既存環境について
直ちに確認できる既存環境がないため予想になるのですが、おそらく既存環境はAdvanced Tierに移行されていると思われます。
Free Tierにおさまる利用をしている場合はTierを変更しておくと良いでしょう。
確認してみた
それでは簡単に試してみます。
今回は私の検証用AWSアカウントの東京リージョンを対象とします。
マネジメントコンソールからAmazon VPC IP Address Managerにアクセスして新規にIPAMの作成を開始します。
作成画面に新たに「枠」と言う形でTierを選ぶ欄が増えてますので「無償利用枠(Free Tier)」を選びます。
その他の設定は環境に応じてとなりますが、今回は運用リージョンに「ap-northeast-3 (大阪)」を追加しています。
これは運用リージョンが複数ある場合に制限が付くのか否かを見るために指定しています。
これで「IPAMを作成」してやればあっさり出来上がります。
スコープ
Free TierではPrivate IPの管理はできませんが、スコープ自体は初期設定で用意されていました。
プール
Free Tierではスコープを選ぶ際にPrivateなものがグレーアウトされ選択不可になっています。
また、Publicスコープからプールを作る際も「VPC 内の IP スペースを計画」や「(他リージョンへの)ロケール選択」はAdvanced Tierを要求されます。
リソース検出
リソース検出はFree Tierでも使えました。
モニタリング系
モニタリング系の「ダッシュボード」「リソース」「IP履歴の検索」はAdvanced Tier向けということでFree Tierだと表示不可でした。
「パブリックIPに関するインサイト (Public IP Insights)」だけFree Tierでも利用可能です。
(作成したばかりなのでまだインサイトが表示されていませんが...)
【2023年11月21日追記】
インサイトが表示された結果はこんな感じです。
【追記ここまで】
Tierを切り替えてみる
Tierを切り替えるには対象のIPAMを編集してやるだけでOKです。
「変更を保存」すると処理がリクエストされ、しばらく待てば完了します。
Advanced Tierになれば全機能が解放され従来通りの使い勝手になります。
ちなみにAdvanced TierからFree Tierの切り替えも同じ手順で可能です。
私の場合リソースが全然無い状態で試しているので特に問題無くTierを変更できましたが、既存リソースがある場合は何らかの検証エラーが出るかもしれませんのでご注意ください。
追記 : これまでPublic IP Insightsを使っていた方へ
Public IP Insights自体は今年の7月末から提供されはじめた機能です。
当時からIPAMサービスに属する機能でしたが前提条件なく利用可能でした。
今回の更新に合わせてIPAMリソースが作成されていることが新しい前提条件になっています。
(IPAMリソースが無い場合、新規作成を要求される)
今後はFree Tierで構わないので事前にIPAMリソースを用意する様にしてください。
加えて、改めて動作確認した結果、検出可能なPublic IPは「IPAMリソースの運用リージョンに限定」される様です。(運用していないリージョンのPublic IPが検出されなかった)
アカウント内すべてのPublic IPを検出したい場合は全リージョンを運用リージョンにしてください。
最後に
簡単ですが以上となります。
無料利用枠ができたことでIPAM利用の敷居が下がりました。
いまのところは「Public IP Insights利用のためのFree Tier」という印象ですが、安心して無料で試せるメリットはとても大きいと思います。